かれかまわず声をか

「おお、久しぶり」
 寝ぼけたような 情けない声になってしまった。
「ふふっ、私がいない間に、学内の知り合いが爆発的に増えたようだな」
「そうかなあ。 変わらないよ」
「いや増えた。
 休み時間になると だれかれかまわず声をかけていて、入り込む隙間がなかった」
「ごめん」
 そうだ、火梛の様子を聞かなくちゃ。
 迷惑をかけていないだろうか聽力問題

「ユン、会いたかったぞ」
 隣の黒縁眼鏡が言った。
 開口一番、よく通る声で きっぱりと放たれたこの台詞に、
 対処の仕方が分からない。
 笑ってごまかすことさえ出来なかった。
「あわわわ、居たんだ」
 眼鏡以外は、いまどきの若者風になっている。
 きっと、お兄さんからの借り物だろう心理治療師

「うむ、朝から星来と一緒に授業を受けていた」
 ええっ、今日は経済学と教育学、
 それから何だっけ…… 今のは法学だったような気がする。
 あと一つは文化人類学
「聞いてて分かったの?」
「ほとんど分からぬ」
 うん、そうだろう、そうだろう。
 私と同じだ。
「だが、考え方は面白かった」
「あはは、そうなんだ。
 ところで、学校を休んで星来は何してたの」
「それをユンに見せようと思った。 うちに来ないか」
「行く天然維他命!」