見終わって売店に行くと、今回の特別展のカタログがあったが、
欲しいというほどでもない。
唯一気に入ったのが、象に載って陽気に笑っている神像だけど、
絵葉書があれば、それだけ買おうと商品棚を見た助聽器。
どこかで見たことのある絵葉書だが、展示作品とは関係が無いようだった。
「あれっ、展示作品の絵葉書は ないのかなあ」
ぶつぶつ言ってたら、
販売員さんが「こちらです」と指差すところに纏めて有った。
「無言堂に寄りたいのだが、ユンも付き合う?」
何も買わなかった星來が誘う。
「うん、付き合う。 何を買うの?」
「紙。 水墨畫に嵌(はま)ってしまったのだ。 面白い」
「あははは、分かる。 思ったより面白いよね。
つきたて、破墨、たらし込み、米點、覚えた技法を使うだけで包包面、
ちゃんと水墨畫になっちゃうんだよね。
私も嵌りそう。 紙だけなの」
「筆と墨は 星白屋の外商に 最高級品を注文したが、
紙は扱っている種類が少ない。
うちの外商擔當も、
得意客に頼まれて 無言堂で調達したことがあったらしい。
自分で行ったほうが早いし、あれこれ選べる」
誘われるままに、無言堂に行くべく、
美術館を後にした臍帶血 香港。